2011-12-24

クリスマス・キャロル

お前なんかが、なんで親みたいなツラしてるんだよ、カネもないくせに、定職もないくせに、お前みたいなクズが、家族みたいな顔をして、どうして家に入ってくるんだよ、どっかいってくれよ、もう、私たちのことを、ほおっておいてくれよ。

自分の娘を暴行し、「妻と間違えた」と言い訳をした宣教師の話を聞いていた。空は曇っていて、窓の向こう側には灰色の雲が広がっている。安物のスピーカーから流れてくるクリスマスソングが、肌に貼り付くような気がする。ファミレスのこの席からは、いつも同じ風景が見えた。道路と森と、道を挟んで反対側にあるアメリカ資本のショッピングモール。道を、手を繋いだ親子連れが歩いていく。その顔には笑顔が浮かんでいる。窓のこちら側から見ると、それはとても遠い風景のように感じられる。

四階のベランダ、静かな深夜。向かい側の団地の窓はすべて消灯されている。団地には市長が住んでいる、と、以前警察の誰かが言っていた。団地の駐車場には、定期的に覆面がやってきて、パトロールをして帰っていく。黒塗りのワゴンが、静かに走り去っていくのが見えた。娘たちと、その母親はもう眠っている。私は寒さにジャケットの前を合わせ、空を見上げようとする。どこかに疲労があった。霞んだ夜空に、流れ星がひとつ落ちたような気がした。ゴミだらけのベランダで、空き缶を拾う。クリスマス特価、80円。

深夜に近いスーパーの特価コーナーの前で、何を買って帰ろうか考えている。寿司、刺身、ピザ。どこにいってもクリスマスにつきまとわれている。先ほどケーキを買って持って帰った時、家には誰もいなかった。テーブルの上に書き置きをして、ケーキを置く。部屋には、兎の糞の臭いがある。脇から老婆が割り込んできて、食材をさらっていく。老婆の背中は曲がっている。じゃまなんだよ、と老婆はつぶやく。煙草が切れている、と私は思う。何もかもが、売り切れているような気がする。

流星雨を見に行きたい、と娘は言っていた。結局、扁桃腺炎で動けなくなった娘の代わりに、近くの公園まで足を運んだ。夏になると、毎年暴行事件が起こるという夜の公園。巨大な野球場が、森の中にひっそりと横たわっている。息が白い。たぶんもう会えないよね、と女は言っている。野球場のフェンスの前に立って、グラウンドを眺める。夏頃には、そこで試合に興じる少年たちの姿があった。荒涼としたグラウンドに、冷たい風が吹いている。夜空を見上げるが、何も見えない。薄い雲が、すべてを覆い隠している。星も見えない。よいクリスマスを。