2014-03-28

初春の近況

「これから女になるあなたたちへ」を書き上げてすべての力を使い果たし、書くことを休んでいる。3月頭頃にこのブログも再開する予定だったのだが、ステーキを調理中に200度の油で左の手首を焼いてしまい、火傷が回復するまでキーボードが打てなくなって現在に至る。残念ながらキーボードがないとブログは書けないし創作もできない。とにかく医者が嫌いなので病院には行かなかった。湿潤療法とハイドロコロイド絆創膏を用いて自己流の手当を続けたところ、皮膚はきれいに再生し、まるで赤ん坊の肌のように見えるまでに回復した。人間の自己治癒能力というのは恐るべきものである。さっそく今日は汁がしたたる牛肉を焼いて炙って飽きるまで食べた。

左手が使えない間も、家事はしなければならない。兼業主夫のつらいところだ(ああ、専業主夫になりたい!)。左手に包帯を巻いてパスタを茹でる。ソースを作る。ジャムを作る。風呂やベランダも掃除する。これは家庭内虐待ではないか。そうぶつぶつ文句を言いながら家事を終えて、ソファに腰を下ろして午後の外を眺める。冬は完全に終わりつつあるようだ。炊事をする水がすでにあたたかい。虫たちがあちこちで息を吹き返している。団地にはまた猫が増えた。数えていないがたぶん30匹ぐらいはいるはずだ。夜になると猫たちの性交がはじまる。猫のペニスには逆向きに刺がついていて性交時に抜けないようになっているそうだ。猫を作った神がいるとするならば、性別はおそらく男なのだろう。

ベランダで煙草を吸うと不審者扱いされるので最近は目立たぬように吸っている。反対側の棟に、夜中の二時に必ず風呂に入る高校生の娘がいる。窓は曇っているがほとんど中は丸見えだ。ガラス越しに見える裸体は中性的で少年のように見えるが、両腕で髪をまとめる時に丸みを帯びた乳房がはっきりと視認できる。誰かに裸を見てもらいたいのかもしれないが、私はもう若くもないのであまり感じるものもなく、ベンチに腰を下ろしたままそれをよく眺めている。その光景は触れられない裸体だらけのインターネットとどこかよく似ている。ディスプレイに広がる無限の裸体の前で、私たちは性欲も情欲も誰かに奪われたままそこに立ちすくんでいる。ディスプレイの女たちはいつでも微笑んでくれるが、私たちはひとりぼっちである。