2014-04-13

私はひとりのネトウヨです

本日はネトウヨの一日を読者の皆々様にご紹介いたしますなぁにソースもエビデンスもありませんなぜなら私はネトウヨだからなぜなら私こそがネトウヨだから世間に踏みつけられて踏みにじられて誇りも尊厳も愛も理解もすべてを奪われてなお人を愛したくてたまらないのに人が怖くて人を避けて人を憎んで血反吐をまき散らしてこの格差社会でのたうちまわる一匹の虫けらで差別主義者の豚で残飯をあさる野良犬として生きるしかないネトウヨそのものだから私はなんにも調べる必要などないのです自分のこころに問うてみるだけでよいのです鏡を見ればいいのですそこにいるのは醜いひとりぼっちの自分どこにも居場所のない自分誰にも愛されない自分さあ私こそがネトウヨさあ私だけがネトウヨあの大日本帝国の生き残り安倍晋三の忠実なる奴隷そしてそして私こそが真なる日本人!

薄紫のひかりが染み渡る朝の空に立つアンテナにとまる二羽のつがいのカラスを部屋の窓から見ているのだうらやましくてじっと見ているのだたかが鳥でさえ人生を共にする相手がいるのだ鳥でさえ性交ができるのだひとりぼっちで眠れないままこうしてまた同じような朝を迎えて今日も仕事も予定も何一つない一日がはじまるのだどうせ午後三時まで寝たところで何か予定のひとつでもあるわけではない一体なんのために高い携帯料金を払っているのか食事を犠牲にして払っているのかわからない誰かから電話があるわけでもない誰かに電話できるわけでもないつるつるとした液晶画面を指でこすってガールフレンド(仮)を遊んでかわいい女の子のカードを集めて合成して育成して課金して知らない相手に「かわいいね!」してそれでニヤニヤ笑っているのだカラスでさえ相手がいるのに自分だけはひとりぼっちなのだ。

光がななめに射しこむ午後になって汚れた畳の上で目を覚ましてゴミを足で蹴り飛ばして隣には誰もいなくてああそうだ新しい妻も出ていってしまったのだ前の女には裏切られ捨てられてだまくらかした金持ちの女には貧乏人のウジ虫がとののしられ前の妻から来る養育費の督促状だけなのだ誰もうまく愛せないのだ愛そうとしてもその方法がわからないのだああ誰かに教えてもらえばよかった学校で教えてもらえばよかった頭を下げて教えてもらえばよかったどうすれば人を愛せますかどうすれば人を大事にできますかどうすれば人に優しくできますかできないのだできないのだどうしてもできないのだせっかく新しく結婚してうまくやっていたのに気になってしまったのだ新しい妻が前の男とどんな性交をしていたか気になってしまったのだ人間のクズなのだ嫉妬の塊なのだだからどんな女にも捨てられるのだ。

日が暮れるまでの短く静かな時間は匿名で人を攻撃して楽しむのだ複数のツイッターアカウントを使ってうまくやっている連中を攻撃するのだ叩くのだ煽るのだうまくやりやがってうまいものを食いやがっていい女とセックスしやがってふざけるなふざけるなふざけるな俺はこんなに狭くて汚くてひとりぼっちの部屋にいるのに最低の生活をしているのにカネもないのに借金取りばかりが来客なのに不公平だ不愉快だどうして自分だけがひどい目にあうのだ許せない受け入れられないこんな自分の現実が受け入れられないだから攻撃するのだ憎悪を書き連ねるのだ威張り腐った顔をしている学歴が高くて意識も高くてブランド物のスーツを着ていてツイッターでたくさんfavされていてあまつさえ創作なんてしている連中が妬ましいのだ嫉妬しているのだ悔しいのだそいつらを攻撃せずにはいられないのだああ許してくれでも耐えられない我慢できない苦しくてたまらない指が重く身体には鉛が詰まり頭がずきずきと痛い。

青い夜がやってきて部屋が静けさに包まれるのだツイッターをのぞくのはやめるのだ叩くのもやめるのだ疲れたのだ何もしたくないのだ青白いディスプレイを見るのはもう嫌だベランダに出ようベランダで覗こう道のあちら側の団地の風呂場の窓を覗くのだそこにはうつくしい裸体がある自分が触れられない身体があるああなんてきれいなのかああなんとかわいいのか女の裸体はなぜこんなに神々しいのか女の肉ほどあつくやわらかくしめっていていい匂いがしてかぐわしいものがあるだろうかあるはずがないだから曇りガラスごしに見えるその姿に興奮するのだ動物のように息を荒くするのだしかしなぜか性器が萎えているのだなぜだろういつから不能になってしまったのだろうあんなに固く熱く大きくなって女を喜ばせることができていたはずなのにあれは全部妄想だったのか夢だったのかひどいひどすぎる全部フィクションだったなんてそんな結末があってたまるものか。

街が深紫に染まる深夜は録画しておいたアニメ番組を見なければならないクールなジャパンを見なければならないそれだけが唯一の誇りなのだNHKだって言っている毎日のように宣伝している日本の技術は世界一だと治安がいい国だと日本は日本は日本は世界一の国だとみんなが言っている私もそう思うそう思いたい自分には何もないからせめて自分の生まれた国は中国なんかよりも朝鮮なんかよりも優れていると圧倒的にすばらしいと日本に生まれた自分だけは超ラッキーだと思いたくて思いたくていや思うのだ思っているのだそう自分はラッキーなのだこんなに楽しいこんなにうれしい日本はすばらしい国ベランダから堂々と覗きをしていても誰にも通報されないみんなが優しく配慮してくれて笑顔がうつくしい国私が生まれた国私の居場所がどこにもない国ああやめろやめてくれ現実を見せないでくれアニメを見なければたくさんの友達と永遠に部活を楽しめるあのアニメ番組の数々ああここにずっといられれば私は幸せなのだ現実を忘れられるのだどこにも居場所がないことを忘れられるのだひとりぼっちの自分のことを忘れられるのだ。

ひかりさす夜明けはきらいだ全部見えてしまう何もかもわかってしまうネットの麻薬も切れてしまうああダメだ痛みがぶり返してきたカラスたちが仲良くしている椅子の上で自慰を終えて閉じた窓の外を見ている女たちがあざ笑う声が聞こえるああかわいそうああ哀れ自業自得よ全部あなたが悪いのよ全部あなたのせいなのよわかっているわかっている誰よりも自分が知っているこの場所を誰が作ったのかネットに閉じ込められてどこにも行けない私たちネトウヨ私たち日本人わかっているこの檻をつくってしまったのは私たちなのだそこから一歩も出られないのだ何もしなかったから何もできなかったから私たちが弱かったから馬鹿だったから勇気を持てなかったから責任を取ることを理解しなかったから悪いのだこんなこんな七億の孤独を産み出してしまったのだ私たちはどこにも行けない私たちには希望なんてないあるのは首を吊るだけなのか死ぬのはいやだ死ぬのは怖いこの世から消えさるのが怖い生にしがみついていたい私たちに哀れみを私たちネトウヨに今一度だけ人間として生きる機会を、許してくれ、お願いだ、許してくれ……。

(2014年4月13日)

2014-04-08

花の落ちる道

ブログの真っ白なエントリフォームが目の前にある。書くことはいつでも白紙の前に立ちすくむことだった。何か考えてから書くのではない。何か目的があって書くのではない。空白が文字を呼び寄せるのである。

地方都市には自然だけは豊富にある。近くの中学校の桜並木も見頃だが、私のお気に入りは団地に植えられた椿の花だ。巨大なさなぎのようなつぼみが開くと、中から薄く透き通った桃色の生き物が姿をあらわす。グロテスクなその姿に、思わず足を止めて見入ってしまう。

近所に花を集める子供がいるらしい。買い物にいく途中など、よく道端に摘み取られた花がまとめられているのを目にする。先日は椿の花が五つぐらい路傍に並べられていて、わけもなくぞっとした。それは不吉な徴のようで、誰かの死を悼む名前のない墓標のようにも見える。

土地は余っていて野草があちこちで生い茂るような地方である。しかし公園は狭い。そこでよく子供たちが遊んでいる。子供たちは知らない人間に挨拶などしない。親からそう教えられているのだろう。公園の脇を通り過ぎるとき、息子に似た子供がいるとつい目で追ってしまう。もちろん別人に決まっている。すでに顔も思い出せない。

にわか雨が降ってきて、私は暗い陸橋の下で雨宿りをしている。熱帯育ちなので傘は持ち歩かない。道の脇には未整備の国有地があり、そこに野花が咲き乱れ、雨粒に身体を揺らしている。私は乾いた石を見つけて腰をおろし、煙草に火をつける。生きるだけなら、あまり多くのものは必要ない、と思う。携帯電話を捨てたくなるのはこういう時だ。

先日病院にいくと、ひとつのスマートフォンを共有した子供二人が、ひそひそと何かを話していた。誰もしゃべらない待合室では声がよく聞こえる。チャットアプリで誰かと話しているらしく、A君うざいB君シネとか言っている。私たちはいつでも誰かと繋がっているように見える。好むと好まざるに関わらず、このノッペリとした顔のない現実と、誰もが向き合っており、向き合わざるを得ないのだ。

雨があがった。私は水たまりがひかる道を歩き出す。雲が裂けてそこから日光が漏れている。水たまりに映る顔は疲れた中年男だ。靴に滲み込む水はもう冷たくはない。道の先に、椿の花がまたひとつ落ちている。誰かがそこに置いたのだ。何のために? そう思いながら、花の前で立ち止まる。濡れた花を拾い上げると、花弁から手のひらに雨水がこぼれおちる。誰かに、何かに、このきれいな花を手向けたいと思った。しかし、なぜそうしたいと思ったのか、その動機はどうしても思い出せなかった。

花は五六歩歩いてから、溝に投げ込んで捨てた。