2017-05-29

世界をよぎる鳥の影

外はいい天気だった。すこしずつ夏が近づいている。風が気持ちがいい。

わたしがいる郊外都市は空気がきれいで、自然も多く、かつては山だったらしい。野生の蛍がいるのがその名残だが、一方野生の動物や昆虫も多い。つい最近も道を散歩しているとスズメバチを見かけたが、どこかの梢に巣があるのだろう。わざわざ自分より何百倍も大きい動物を理由もなく襲う昆虫などいないとはいえ、あの高周波の羽音を近くで聴くとぞっとする。アブラゼミぐらい大きいし、子供が襲われたら重症、下手したらショック死ぐらいはしかねない。以前、郊外の山の中古家屋を見て回っていた時に、よさげな家がひとつあったのだが、近くにスズメバチの巣があるということで断念した記憶がある。自然のゆたかな環境で暮らすのはけして悪いことではないが、野生の生き物と共存する知恵やノウハウがなければ、安全に暮らすことはできない。温暖化でデング熱が流行するようになれば、蚊ですら危険な生き物に変わる。とはいっても、山の近くの井戸水はうまく、緑は目に優しく、ホトトギスが鳴く森の近くで暮らすことはそれなりに楽しいものだ。そしてそんな中で机にむかって青白いディスプレイにひたすら向かっている仕事というものはどうなのか、と思わないこともないが、そもそも人間は半自然的存在なのだ、とつぶやきながら、文字を入力する。

どこかで鳥が鳴いている。だがその姿はみえない。この世界をこうして鳥がよぎる。みえないものなど、存在していないのと同じなのだ。