2017-05-17

深夜の飛行機

地元住民との協定により、近くにある空港から、深夜に飛行機は飛ぶことがない。

だいたい毎日夕方頃が交通のピークで、空には複数の飛行機がキラキラと光りながら滑空しているのがみえる。午後に天気がよい日は、仕事部屋の窓を開けて、ぼんやりと空を眺めることが多い。飛行機雲がいくつか横に刷毛で描いたように伸びている。目の前のベランダの日差しはあたたかい。どこかで猫が遊んでいるらしき声が聞こえる。生まれて二ヶ月になる娘は居間のソファで眠っているようだ。小さなベッドも生まれる前に購入したのだが、結局ソファが気に入ってしまったらしく、ソファでないと長いこと眠ってくれない。子供をあやしていると、自分がいつのまにか笑顔になっていることに気がつく。それはほとんど使ったことのない筋肉をいつのまにか使ってしまっている一種不気味な感覚で、自分の顔にはこれだけ生きてきても、まだ一度も使ったことがない機能があったのだ、ということを思う。そしてそのことをもっとはやく知る方法はなかったのか、ということを思う。

夜になり、空を飛行機が明滅しながら、並走してどこかへ飛んでゆく。人は死んだら土になり、魂の存在は虚構であり、そこにはなにも残らない。自分は死に、子供もいつかは死に、人生はひとしく無意味だ。その後に「だが」も「しかし」もつなげることなく、机に向かう。あなたたちは、なにを犠牲にして《仕事》をつづけるのか。あなたたちはどんな代償をはらっていきるのか。だれも、答をもっていないのだ。