2017-06-23

偽の生活

梅雨の湿気が街を覆っている。外国で買ったコートをクリーニングに出そうとしている。タグが外国語で読めないので引き受けられない、と受付の老人はいっている。日本語か英語じゃないとね、といわれている。そうですよね と回答し、服を持ち帰ることにする。

コートは真冬になると壁のような吹雪に襲われる街の市場の一角で買った。野外市場には凍りついた土にじかに座り込んだ老婆や子供がおり寒さに震えながらものを売っていた。店にある蒸し器からは真っ白な蒸気が吹き出して視界を遮っていて、道のあちこちに屠殺された獣の血が凍ってへばりついていた。

このあたりの霧が多い郊外にあるスーパーにも外国人がたくさん働いている。最初は台湾の人かと思ったがベトナム出身のようだった。だがかれらにいっさい話しかけることなくレジに並ぶ。同じ列には子供たちが並び、わたしの髪の毛の色をみて話しかけたいような顔をしている。結局、クリーニングに出すはずだったコートを家にもってかえる。日本語でものを書くのは、日本語が満足に理解できないからなのだ。