2017-07-28

夏へ飛びだしてゆく

今年の夏はきわめて忙しく、普段はあまり遠出しないのだが、とにかく打ち合わせのために外出がとても多い。わたしが住んでいるところは昔はほぼ山だったらしく、野生の蛍などがいるようなところなのだが、当然、打ち合わせは都心部ということになり、人がものすごく多い都心部での仕事を終えて、電車に一時間以上のって帰ってきて、郊外の誰もいない暗いバス停で降りるとほっとする。わたしは子供時代からずっと大都市の周辺部に住んでいたので郊外での生活は新鮮だったが、最近はもうすっかり慣れてしまってここ以外の生活が考えられなくなってしまった。生活コストが安いためその分の経済的余剰をまったくお金にならないことに回すことができるので、読者諸氏にも郊外での生活をお勧めしたい、と書きたいところだが、残念ながら懇親会、研究会、読書会、朗読会、勉強会、新年会などのおもしろいイベントは例外なくすべて都心で開催されるので、けっきょく都心にいたほうが楽なのであった。わたしは不幸だ。

それはともあれ、ブログに書いたかどうか忘れたが、数年前の夏、カブトムシが家に迷い込んできたことがあった。すでにかなり弱っていて、スイカや桃のあまりものを食べさせて、二日ほど涼しい場所に置いておいたところ、じっとしてずっと汁を吸っていた。まっすぐ歩くこともできないような状態だったのでもう駄目かもと思ったが、三日目の朝、すっかり元気を回復して、窓から陽射しの照りつける中へ猛スピードで飛び出していった。あの虫けらはなにをしているかと思うが、もちろんとっくの昔に死んでいて、その子孫がこのあたりを元気に飛び回っているかもしれない。虫だけではなくひとだってしょせん夏が終われば死ぬかもしれない身であって、美味いものを食べて体力をつけて、夏の中へ勢いよく飛び出してゆく、そういう人生がよいのではないかということを思う。窓の外はすっかり夏である。